YUKIGUNI 15' 下

翌朝、早めに起きて湯に行く。
この松之山温泉は、有馬、草津、と並び、日本三大薬湯と呼ばれているらしいが、それはおそらく温泉地の規模を括ったのでは無く、その泉質を以っての事だと思う。でなければ、有馬、草津などに比べてあまりにも小さい。ただ、その薬効は相当である事を体感した。
私は先日より、親知らずによって何度も噛んでしまった為にできた右頬内側の傷が、炎症を起こして苦しんでいたのだが、夕べより、どうかとは思いながらも、入浴の度この湯を口に含み、患部を濯いでみた。塩辛くて苦かった。すると、この夜には炎症がすっかりひいていたのだ、が、効果には個人差があると思います。
朝食はまた腹一杯食べた。私は普段、玄米に黒米を混ぜた、源氏側の兵糧のようなものを常食しており、たまにスーパーの弁当の白米を食べただけでも、その美味さに感動するのに、そんな人間が、徐々に慣らしもせず、いきなり最高ランクの魚沼産コシヒカリを食ったものだから堪らない。もっちもちであった。

宿を出発。まつだいから直江津で乗り換え、高田で下車。雁木造りの街並みを見物。雁木はここ豪雪地の商店街特有の雪避け屋根で、簡単に言えばアーケードみたいなものである。車道の雪が除雪の為、歩道側に寄せられ壁になれば、商店街が細長い雪と木造のトンネルになり、何とも言えない味わいが出る。私は個人的にとても楽しみにしていたのだが、この日、高田では雪はもう随分消えており残念だった。

高田を離れ信越本線を南下。
山に入り車窓を見ていると、相変わらず雪は多いのだが、除雪が完璧なので、道路や駐車場のアスファルトははっきり姿を現しており、何ら交通に支障は無さそうである。それが妙高高原駅を超えたのを境に、道に雪が残るようになってくる。あちこちに駐車してあるのが見られた除雪車の類も、かなり減る。長野県に入った瞬間、雪の対策に差があるのがわかる。ただ新潟が特別なのだろう。徳島だと2、3cmの積雪で県の交通は麻痺する。

長野駅に着き、時間が無いので早歩きの善光寺参り。
有名な寺で、門前から沢山の観光客がいた。外国人も非常に多い。しかしながら私ここが何故有名な寺なのかは全く勉強せずに来た。私の持っている善光寺に関する知識は、つげ義春無能の人」シリーズの最終話「蒸発」にて、その生涯を紹介されている漂泊の俳人、井上井月が、物乞いとアル中を理由に村人達から持て余され出し、捨ててこられたのが、この寺である、と云う事のみである。とても賑やかな寺だから、確かに物乞いには良いかも知れないと思った所で、名物おやきを食べながら駅に戻った。
その後松本で一泊。