大阪 2014

大阪心斎橋、火影にてライブ。
火影のスタッフであるナオさんが、我々が春に出したアルバムのレコ発イベントを企画してくれた。
ここへは一昨年、別に活動していたleewayと云うバンドでも来ており、その際も同様にナオさんの企画に誘ってくれたのだが、thirsty chordsとしては、大阪での演奏自体が7年振りである。

リハーサルを15時頃終え、開場までの時間、大輔と連れ立って天王寺の新世界へ。
私は町田康のファンであり、氏のエッセイに書かれているジャンジャン横丁の古い立ち飲み屋「みふね」で一杯飲みたかったのである。

新世界周辺へは、二十歳前後の大阪に住んでいた頃、二度ほど来た事があるがその時は、まだ青空カラオケ等の、明らかに無許可と思われる露店が並ぶ、行政代執行の前で、昼間から、いたる所で人が唄い、呑み、寝そべる光景、しかもこれ程の人数、活力に満ちた、いわゆる、無用者達の群衆を、田舎出の自分は見た事が無く、強烈な衝撃を受けた。

当時よりはややアミューズメント化した感じは受けるが、それでも弛緩した、街全体が酒気帯びたような空気は、相変わらずに思いながら歩くと、やはり観光化とは到底無縁げな「みふね」を見つける。
奥に5メートル程、長くL字カウンターの店内。80歳近そうな老婆二人が店を営んでいる様子。
入口側に立ち、ビール大瓶380円。その後、肝焼き、おでんやらを注文するのだが、返事が無い。その年齢から、耳が遠いのだろうか、大輔と話していると、ちゃんと注文は通っており、ちくわ、ごぼう天を皿に乗せて老婆、「わて、返事したら声と一緒に記憶、抜けまんねん」と不敵な笑み。さっきのは聴こえていたようで、こちらは少しバツが悪い。
続けて「ウチのちくわ大きいやろ。せやけどウチの、穴は食われへん、穴は残すんやで」再びニヤリと笑う。
こんなやり取りに嬉しくなってくると、大輔が一服催したのだが、灰皿がどこにも無い。客層から考え、店内禁煙などは有り得ず、自分も不思議に思っていると大輔、足元に幾つもの吸い殻が、そのまま床に捨てられている事に気付いた。ただ、彼には通常一般のモラルと呼ばれる物があったようで、婆さんに灰皿を尋ねると「下、ほったらよろしいわ」と、あっさり。
ずっとこうなのかを聞いてみれば、昔はロングピースの入ってた缶を灰皿代わりに使用してたが、何度置いても客に盗られて無くなってしまう。それならば、といっそ灰皿は置かずにそのまま床へ、と云う形にしたらしい。ただの空き缶が、何度も盗まれる事も凄いが、店側の対応も凄い。

赤ら顔で心斎橋に戻り、ライブ。
共演はガナリヤサイレントニクス、SYAS、seventeen again、manchester schoolとどれも良い。関西の友人も沢山来てくれて、非常に楽しくできた。

打ち上げ。
自分はどうも平常、無愛想に見えるらしく、相手に失礼な態度をとってしまう事があるのだが、酔ってたり、いよいよ打ち解けたりしてくると、今度は無神経になり、やはり失礼をしてしまう。でも楽しかった。
ナオさんには今回誘って頂いた事はとても嬉しく思っている。そりゃわいは阿保や、酒はあおるし、女房は泣かす、せやけどな、やっぱ好きやねん、やっぱ好っきゃねんな、大阪。