YUKIGUNI 15' 中

18時過ぎに宿に着く。普段は徹底して安宿を選んでいるが、今回は仲居さんがいるような立派な温泉旅館である。玄関口への石段隅に、雪の兎が二羽、ちょん、ちょんと並んで迎えてくれていた。

この旅館には浴場が三つ、内三階の露天風呂が時間帯によって男女の入浴が決められており、19時からはしばらく女性の入浴時間となってしまう為、今入っておかねば損のように思い、部屋に案内された後、仲居さんとの話もそこそこに、湯へ急いだ。
実際、男の入浴時間は18時半までで、そこから19時までの半時間は男女交代までの予備の為の時間、私が湯に入り始めた時は既に18時半が過ぎており、ざぶりとほんの一瞬浸かるだけになった。

夕食は部屋食では無いが、宿内の食事処の個室で取る。地元の食材にこだわった自慢の里山料理のようで、イナゴの佃煮や鯉こくなど、珍しい品が多く、盛り付けの見栄えも美しい。こういった料理の場合、その見栄えも代金には含まれているだろうから、それならこの美しい盛り付け様も写真に残しておかねば損なように思えてきて、一度部屋まで、備え付けの金庫に入れてきたアイ・フォーンを取りに戻ると、仲居さんが布団を敷きに来てくれている所に相俟ってしまい、何だかばつが悪い。とっととアイ・フォーンを回収して料理に戻ろうと思ったら、持ってきた鍵が金庫用ではなく、部屋用。仕方無くもう一往復し、やはり再び布団敷きを終えていない仲居さんとは顔を合わせ、ようやく料理の写真を収める事は出来たが、場違いな客が来た、と思われたかも知れない。
料理はとても美味しかった。ただ量、と云うより品数が非常に多く、コースの最後にメインの新潟和牛ステーキと魚沼産コシヒカリが出るので、その頃にはもう満腹状態、とうとう米が殆ど入らなかった。
これ程であれば「限定!お肉たっぷりプラン」では無く、「美味!少量プラン」で予約すれば良かったと思う。プラン名の「限定」が、凄く得ができるように思え、「少量」と云う箇所が、酷く損をするように思えたのである。

食事を終え、今度はゆっくりと湯に浸かり、一日が終わる。
丁寧に敷かれた布団に横たわり、仕事も見つからぬまま、こんな雪深い宿に夫婦二人で贅沢をして、まるで心中に来たようだ、などと考えながら、いつか眠りに落ちた。