平成博徒伝説

ダイドーの当たり付き自動販売機がよく当たる。
複数の自動販売機が並ぶ場所で飲み物を買う場合、私は大抵においてダイドードリンコを選ぶ。ダイドードリンコのデミタスコーヒーは薫りが違う、とかミスティオの炭酸ぐらいが丁度良い、とか云う風にそのメーカーの商品が好みなのでは別段無く、むしろ、「シワシワ行きやー(阿波弁で、自分の歩幅で歩め、の意)」なんて馴れ馴れしい機械音声が流れる辺りにはやや苛立ちを覚えてるぐらいで、単純に、当たり付きの機械が多く得なので、私はダイドードリンコを選んでしまう。
少なくとも年一回ぐらいは当たっており、私としては割と当たりが出るものだと云う認識をしているのだが、少し前にも当たりが出た際、速やかに商品ボタンを押さねば無効になってしまうので焦り、欲しくも無い漫画キャラクターが缶にプリントされたドラゴンボールサイダーを選んでしまった所、近くのベンチに座っていた二人組の若い男が、当たってるの初めて見た、と羨望の眼差しを私に向けていた。
自分以外に周りからも当たりが出たという話は余り聞かない。

かといって私が選ばれし強運の持ち主かと云われても決してそのような事は無い。そればかりか、むしろギャンブルと呼ばれるものには勝った記憶が無い。
宝クジ、福引、パチンコ、スロット、競馬、オイチョカブ、ちんちろりん、アラレちゃんドンジャラ、どれも一度や二度くらいは友人、先輩に誘われてやった事があるが、どれも惨敗で、昔、トランプのポーカーと云う高度な心理戦が必要とされるゲームをした時などは、最後に今までの負けが一気に返せる程の最高の役が揃ったのに、緊張の余り、カードを持つ手の震えが止まらず、相手にモロばれで負け。
またある時は、普段より、こいつは馬鹿だ、と侮っていた相手に、メシを賭けてオセロをしたら負けた。
本当にこれまで賭け事には悔しい思いをしてきた。特にオセロ。

しかしながらダイドー自動販売機は当たる。
日本には景品表示法という法律があり、当たり付き自販機の当たる確率というのが1/50以下、つまり2%以下にせねばならないという決まりがあるらしく、機械の設定によってはそれ2%以下もある。
そうそういつも自販機で飲み物を購入している訳でも無いのだから、やはり私はその中で結構な高い確率で当たっているように思う。
こんなんで帳尻合わせされてもなあ、賭け事はこりごりじゃわ、と思ってたりするのだが、来月より私は33歳にして再び無職となる事が決まっており、これについての私は、人生をさすらうギャンブラーと云えなくも無い。