神山森林公園随歩

都会では、女子高生にお金を払って一緒に散歩をする「JK散歩」なるサービス業が現れ問題視されているようだが、ある地方の町では、働き盛りの筈である30過ぎの男が、何の生産も消費もせず、「MO散歩(無職の男の散歩)」などと自ら称し、昼間っから近所を闊歩している。
これまた由々しき問題である。

近所を歩き回るのにも少し飽き、人目も気にならん事も無いので、先日は車を走らせ、20年振り位に、家から少し離れた「神山森林公園」へ出かけた。この公園へは幼い頃、当時熱心に「日本野鳥の会」の活動をしていた父親に連れられよく行ったものだが、父も忙しくなったのか、次第に会にも参加し無くなっていった事と、家から歩いて行ける距離に、図書館や美術館も備えた複合施設「文化の森公園」が新しくできた事もあり、わざわざ車で30分以上かけて足を運ぶ事は無くなっていった。

久しぶりに散策しようと来たのだが、園内の敷地は広く、西竜王山の山道や森も含む遊歩道は、勾配もあり、地図には5kmコース、15kmコースが示されているも、なかなかしんどそうなので、行けるとこまで行って途中疲れたら引き返す、という考えで歩き始める。
木々の紅葉はまだ色付いていないが、足元には栗や団栗がたくさん転がっており、秋を感じさせてくれる。
「いが」の中を靴で広げて覗いてみると、どれも中身の栗が無い事に気付く。栗拾いも兼ねて散歩に来た人がいるのだろうと考えていると、右前方の道の外れに銀色のフサフサした毛が丸まっている。
猿の背中である。私がそれに気付くと同時に猿も振り返り、私と目が合うと、素早く森の中へ消え去って行った。野生の猿を見たのは初めてで驚いたが、なかなかキレイな顔と毛並みをした、爽やかな印象だった。中の栗を食べていたのもこの猿なのだろう。

駐車場近くの広場まで戻って来ると、水分を持たずに歩いていたので酷く喉が渇いた。
水飲み場を見つけるなり、母親の乳房に吸い付く空腹の乳飲み子の様に、私は沢山の水を飲んだ。