Okina of Taketori

妻の実家の裏山の筍が、例年よりも早くから出始めたので、先々週から土日を使って採りに行っている。
この冬、仕事もせずこの山の竹を、手入れと称して無闇に伐採をしまくったお陰で、何年も藪に覆われて行けなくなっていた竹林への正しいルートが復活し、今年は随分山に入り易い。義母が電話で話していた通り、その今回切り開いた山の入口付近から、もう既にポコポコと筍が頭を覗かせていている。
5、6年前から毎年この時期になると、ここへ筍掘りに来る事が恒例となった。鍬を振る腕も中々慣れてきて、もうベテランと呼ばれても良いではないかと思いながら、今、正に旬物を次々と掘り出していると、ある時、竹の根っこに妙な具合に噛んでしまったのか、土から鍬が抜け無くなった。このベテランである自分の鍬さばきに抵抗しようなんて、何という生意気な筍、と腹ただしくなり、力任せに木の肢を上下させていると、鉄具を差し込んでいる部分からボキリと折れた。
この冬の竹の伐採時にも、竹引きノコギリを強引に引いて折ったばかりで、連続なのでとても気まずい。そこで、同じく山に入って竹藪の手入れをしていた妻に、「一緒に両親の所へ行って謝って貰えないか?あ、それか君が折った事にすれば、長女だから大目に見て貰えるんじゃないのか?」などと案を持ちかけるが、倉庫で仕事中の両親の所へ、その折れた鍬を見せると、特に小賢しい言い訳をせずとも、「水に浸け置きし過ぎて肢が腐ってきてたのだろう」と、新しい鍬を出してくれた(注:鍬は基本使用の前に、差し込み部分を水に浸け、木の肢を膨張させて鉄具を抜けにくくする必要がある)。新しく借りた鍬は、筍掘り用では無く鉄具の先が短いが、その分丈夫な感じがするので、勢い込んで振り回した。
掘った筍は、味の良さそうな小振りな物を選んで持ち帰るが、それでもかなりの量になる。それを妻が、一度に鍋には入りきらないので、何回も分けて灰汁抜きをし、茹で、直ぐに食べない分は冷凍してストックにする。
今日、いつもより仕事が早く終わると、妻から「今日のおかず、お酒がすすみそう」と云うメールが入っていた。期待して帰ると、晩飯のメインは筍と鶏肉の甘辛い炒め物で、確かにこれは酒がすすむ、とガバガバ呑んで泥酔したら、妻は怒った。