新年度なので

去年10月の終わりに子が産まれ、以来、バンド活動をしたり、音楽を聴いたり、本を読んだりする事がめっきり減った。子供が産まれると価値観が変わる、とよく聞くが、価値観とかそういう大袈裟な事ではなく、ただ現実的に、仕事以外の時間を、ほぼ家族を優先させるべき状況になる、というだけの事である。
なぜなら、この子は、まだ一人でなあんにもできないのだから。
子育ては私たち夫婦には初めての事で、今でこそ若干の慣れができてきたが、新生児の頃は、とにかく気持ちに余裕が無かった。特に辛いのは夜泣きや深夜の授乳による寝不足である。睡魔と戦いながらミルクを与えるのだが、この子の飲むスピードはかなり遅く、毎回1時間ほどもかかってしまう。
しかも生後3ヶ月が経っても飲む量はあまり増えず、このままだと成長に影響が出るのでは、と不安にもなった。
ところがこれは、哺乳瓶の乳首は子の成長に合わせて段階があるのに、3ヶ月になっても未だ新生児用の物を使っていたためだったとわかり、これを改善以降は、量もずっと増え、かつスピーディに飲んでくれるようになった。
無知な両親の元に産まれると、子は不幸だ。
涙で詫びる私たちに、この子はただ、笑うような、怒るような顔で、「ぶっ、ふうー」と応えるのだった。
もちろん主に子育てをしてくれているのは妻で、自分はそのサポート程度に過ぎない。それでも、たとえ飲む時間も随分短縮されたとはいえ、やはり勤めながらの深夜のミルクは辛い。その辛さから、思いやりにかけた言い争いを妻としてしまう事も多く、ひどい時にはどちらが離婚を口にする事さえあった。そして、離婚後の子の養育の事などを一人想像し、もしかするとこの子の成長を近くで見る事ができなくなる、などと考えると、またも涙はとめどなく流れ、そうなると、この深夜のミルクの時間も、掛け替えのない時間のように思うようになり、それ程に苦とはならなくなった。

夜、灯を消して、ベビーベットの足元に敷いた布団に寝そべり、見上げながらこの子が眠りにつくのを待っていると、暗闇の中、ベッドの柵の間から、白く小さな手が浮かんで揺れている。そっと触れてみると、その手は、仕事でアカギレだらけの私の指をしっかりと握ってくる。驚くほど力強い。
私は、この子が愛しくてたまらない。信仰心など殆ど持たない私だが、イエスの云うアガペーとはこの事か、と思った。柔らかく握り返した私の手の指を、この子は離さない。
そしてよりしっかりと私の指を握る為なのか、ロッククライミング選手が岩壁から僅かな引っ掛かり探るように、私の指の傷口の引っ掛かりをカリカリして探る。
激痛。ジャスト・割れ目。
ものすごく痛い。


本当に徐々にではありますが、バンド活動も再開したいと思い、久しぶりにライブ出演します。
連休前の方も、仕事を頑張る方も、無職業の方も、観に来て頂けたら嬉しいです。

5/2(wed)
at CROWBAR
act
w/ DETENZIONE(Milwaukee), RIO TURBO(Milwaukee), SILVERWIGS, MESS., DJ HYPER RAVE NIGHT

ADV ¥2000 DOOR ¥2500(+1d)
OPEN 18:00 START 18:30