O君の事

望月ミネタロウ「ちいさこべえ」3巻が先月末に発売され、1巻から何度も読み返している。原作の山本周五郎の小説もきっと素晴らしいのだろうが、漫画が完結するまでは読まないでおこうと思っている。3巻ラストの「りつ」の表情が私の胸を締め付ける。

職業に貴賤無しとあるが、それでも私が尊敬する職業は「力士」と「漫画家」である。ならば元力士で漫画家である琴剣さんは、あなたとっては盆と正月が一度に来たような、ガンジーマザーテレサの合いの子のような存在なのか、と問われると、そうは思えず、矛盾してるから不思議だ。

職業力士のその「でかさ」は背の低い私の心を捕らえて離さないし、逆に小さな力士は尚の事、工夫、努力で大きな相手に勝ったりする姿には大いに感動をする。

漫画家については、私は小学校の頃の将来の夢が漫画家であった。
しかしながら私は絵もストーリーも書けず努力もせずで、ひたすら読者であり続けた結果、自分が早々に諦めた、漫画を書ける人には例えアマチュアだろうが無条件に尊敬をするようになった。

4、5年程前、よくバンド練習で利用するココナッツスタジオのアルバイトスタッフにO君がいた。彼は大学を卒業すると県外への就職が決まり徳島を離れたのだが、ごく短い期間、このスタジオで創られたフリーペーパーに、彼が4コマ漫画を掲載していた。
結局このフリーペーパーはたった2号で終わってしまのだが、その4コマ漫画が凄く面白かった。
その一つ、あるプロ野球選手が病気の少年の為にホームランを約束し、打つには打ったが、そのホームランはもはや可哀想なぐらい勝ちまくってる中の駄目押しの一本であり、一応少年も元気になって選手にお礼を言う、そんな内容で、絵もいましろたかし的な脱力した感じ。
O君にいましろたかしは好きかと聞いても全く知らないらしく、才能あったんじゃないかと今でも思っている。