アリーマイラヴ

妻の実家で飼われているダルメシアンのアリーは今年11歳で、もう老犬である。だがそれを感じさせない程の胸筋は隆々、食欲旺盛で元気であったのだが、以前から気にはなっていた足の腫瘍が最近、悪性であるとわかり、どうやら癌との事。
急遽切除をしたのだが、やはり本来高齢で体力的にも厳しかったのか、かなり進行もしていたのか、後ろ足の膝から下がすっかり麻痺してしまい、歩く事が出来なくなってしまった。獣医が言うにはもう長くは無いだろうとの事。
普段、後ろ足を前方に投げ出したまま前足だけで這うように移動している。その健気な姿が胸を打つのだが、彼女としては、何故か後ろが思い通りにならん事を腹ただしく感じている程度なのか、ぱっと見は元気、食欲も相変わらず。
とにかくアリーが少しでも苦しみを軽減して余生を送られるようにと、今まで外で飼われていたのを屋内へ入れ、実家の人達の仕事中は、時間のある妻がつきっきりで介護をしている。食べ物、介護用品なども調べ走り回っている。
特に大小のお世話が大変そうで、毛布を何度も交換し、洗濯し続けている。
彼女は今だかつて無いぐらい家族が自分に構うものだから、随分甘える様になっているようで、周りに誰も居なくなるとクフンクフンと声をあげ、それでも放置するとワフワフと吠える。
先日、妻が次々と汚れる毛布を洗濯している間、私はせめて遊び相手ぐらいにはなれるだろうと、ずっとアリーを撫ぜり続けていた。
ただ撫ぜるだけでもいけない。彼女は防寒着として犬用のダウンジャケットを着せられているのだが、一度私がその中に手を突っ込んで直に胸をさすったのがいたく気に入ったようで、その後はジャケットの上からさすったぐらいではも最早満足せず、ワフワフと、たわけが手を抜くな指を立てろと、吠えてくるのである。元気そうなのは嬉しい。