早稲田怪談

連休真ん中の日曜。東京、早稲田zone-bにてライブ。
これまでは東京の場合、前の日の深夜出発、高速道路を車で走らせて翌朝に着、と言う具合なのだが、最近隣の高松から格安航空会社を利用すれば、殆ど交通費も変わらず、しかも短時間で東京へ行けると言う事が判り、今回は飛行機。
それなりの余裕は持って高松空港に着いたつもりが、連休中とあって空港の駐車場がいつまで経っても空かず、チェックイン、手荷物預けこそ、運転手に大輔だけ残し、先にカウンターに走って済ませたものの、駐車場が空いたのは搭乗ゲート最終締め切りの5分前。冷や汗と、鼻炎による水洟が止まらぬままフライト。

結局イベントのオープンのぎりぎりくらいの時間に早稲田着。主催をしてくれたdose it floatはじめ、東京周辺在住の友人らと再会。
ライブ。
いつも東京では、前日は移動の為ほぼ眠っておらず、睡眠不足のまま演奏になるのだが、今回は飛行機での移動の為、睡眠はしっかりとっており、しかもライブ前の酒も控え、万全な体調でライブに臨んだ。
つもりだったが。意識がハッキリし過ぎた為なのか、かなり緊張に襲われた。なかなかのガタついた演奏を披露してしまった。
ただそれも、自意識過剰なだけであり、誰も我々の演奏、楽曲に完成度の高さを求めている人など居ない、と改めて自覚し直す事にして、当然、共演バンドは皆素晴らしく、とにかく楽しいイベントだったので何ら良し。

宿泊の予定なので、ライブハウスでそのまま行われた打ち上げではすっかり酔い、ダズイットのニクマン君夫妻の家に泊めて貰う。
同じダズイットの松村君、ディストロ&レーベルのurban sleep disksやbender等のバンドで活動しているサカイ君も一緒に混じり、二次会。明朝の飛行機時間が早い為、軽く済ませて就寝。

深夜未明、事件が起こる。

狐憑き、と云う現象を体験した事はあるだろうか?
古来日本において、狐は神の使いであったり、霊力を持った動物であると考えられてきた。そしてしばしば人間に取り憑き、憑かれた者は精神に異常をきたす。本人の意思とは関係無しに、不可解な行動を起こしたりするのである。

そう、事件とは、プライドバシーの問題もあるので、実名は明かさないが、まあ仮に名を大野中助とでもしておこう、彼が狐に憑かれたのである。
深夜、皆が寝静まった頃、狐に身体を支配された中助は、暫くプツリ、プツリと何かを呟きながら闇の中を蠢き、やがて部屋の隅にて己の全てを解放し、そして果てたのである。
この科学の発達した現代において、そのような迷信事はあり得ない、と言う人が殆どかも知れないが、唯一、彼と同じ部屋で眠り、現場に居合わせた私は証言する。あの時の中助の呟いていた言葉は、我々の解する言葉とは明らかに違っており、人外の者による声の様であった!
それに彼は数年前も、高松でのライブで人の家に泊めて貰った際、その家が神社も兼ねていた事もあってか、夜中に一時、神隠しにあっているのである。

何にせよ、今回甚大な被害を受けたのは、中助を含む我々を、厚意で家に宿泊させてくれたニクマン君夫妻である。
それを「全く気にしない、良い笑い話だ」と言って許してくれた彼等の慈悲、挙句に、そのまま松村君と共に空港まで送り届けてくれた事に、もはや感謝の言葉も思いつかない。
dose it floatはもう少しすれば新しい音源がリリースとの事。まずはその報告を待つ。