九州うまかもん紀行 2

11/17。
昨夜もあまり眠れ無かった。前日はほぼ徹夜での出発だったので、本来ならベッドに横になれば直ぐにでも眠りに落ちてしまうべきものだが、口内右奥の親知らずが、今更成長して歯茎を突き破ってるのか、虫歯によるものか不明だが、とにかく痛くて眠れない。
旅行前は何事も無かった歯なのに、よりによってこのタイミングで、と情け無く思う。
旅先で歯医者に行く余計な時間など無く、痛み止めの薬も備えてはいない。取り敢えず藁をもすがる思い、インターネットで応急処置を検索すると、歯痛に効くツボ、と云うのが、手の平の中指薬指の付け根と、手の甲の人差し指親指付け根にある、との事で、両手合わせてその4点を、ベッドに潜り揉み揉み指圧をし続けた。
いつしか外は白くなった。

ホテルの朝食バイキング、睡眠が駄目なら食って体力を回復しようと、左側の歯だけで大量のオニギリ、パンを咀嚼、極端に多い炭水化物補給をし、今日は鹿児島を目指す。

始めにJR、諫早島原鉄道に乗り換え、島原。島原港オーシャンアローと云う高速船に乗り、島原湾を超えて熊本へ行く。
この高速船は30分程度の乗船時間なのだが、随分豪華な作りでビール、ワインを飲ませるラウンジもあり、僅かな時間ながら、高級な旅をしているような気分になる。
甲板にも出てみると、幼い姉妹を連れた母娘、アジア系外国人家族が先に居て、写真、動画を撮影したりして遊んでいる。
今回の旅は鉄道、バスの陸路は勿論、船、飛行機も利用している。私達人類は陸海空、地球全てを支配しているようなものだ、偉いなあと、遠ざかる雲仙岳を眺めながら悦になっていると、突然、船がカモメの大群に取り囲まれ、空一面が白くなった。
私は「鳥」と云う古いパニック映画を思い出し、怖くなった。その映画は今と同じように、町全体を何万羽もの鳥が覆い尽くし、人を襲う、と云う内容で、あれは驕り高ぶる人類への、自然からの怒れるメッセージなのだ、と云う事が今やっと解った。
私は顔や手を啄ばまれる覚悟をしたのだが、どうやら実は、同じく甲板に出てた幼い姉妹が、エビセンをカモメにやり出した為集まっただけで、また大袈裟に書いてしまった事を猛省し、昼過ぎ熊本港に着。
バスで市内中心に向かい、急いで熊本城を見学。ただ私達夫婦共、城下町は好きなのだが、城自体にはあまり興味が無く、何と無くノルマ的な感覚で来ただけなので、入場料を払う門までで引き返し、あとは土産売り場で名物、いきなり団子を食べ熊本を離れる。

熊本から鹿児島へは新幹線。夕方、鹿児島市着。
鹿児島中央駅を降り立つ。かなりの都会なのだが、そのビル郡の間から、かなり近い距離に桜島御岳がそびえ立って見える事に驚く。桜島は有名だが、まさかこんな街中から目の前に、活動中の火山が在るなどとは思って無かった。
もっと近くで桜島を見たいと思い、ホテルから歩ける距離にある鹿児島湾沿いの公園に向かったが、もう陽が沈むのが早い季節、着いた時の鹿児島湾は全くの闇。
ホテルに戻りさつま揚げを食べ、芋焼酎を飲んで寝る。未だ歯は痛く、ツボの刺激、欠かさず。