モーモー

前々回の結婚パーティーでゲットした松阪牛が届く。
我が実父が言うには「その肉は一生に一度、食えるか食えないか」という大変な事なのだそうで、それほど代物をまだ人生のスタートを切ったばかりである俺と妻の二人だけで味わってしまっては世間様に、そして誰よりその口振りから予測するに、未だその肉を口にした事が無いと思われる、去年定年し現在タクシー専門の天然ガス補給所でアルバイトをしている我が実父に申し訳無い。かと言って実父だけを招待したのでは実母に角が立ち、嫁姑戦争へと発展しまっては大変であるし、花が無い、そもそも肉も300gしか無い。という訳で妻の妹君を招待し、6月のジメジメに負けないスキヤキ・パーティーしょっぱなから今宵の主役、松阪に箸をつける。今、実父を越える瞬間か…。
うん、まあ美味しい。脂が甘い気がする。しかし、もっと感動するものかと思っていた。
一応スキヤキに肉が少なくては淋しいと、食べ比べの意味も含め普通のスーパーのスキヤキ用の肉も買っていたので続いてそちらを食す。なんと、すごく血の味がするのだ。この肉だって一応は国産黒毛和牛であるのだが。再び松阪を味わえば血の臭みなんぞ全く無い。これでは高級な肉の美味しさを知るというより寧ろ、肉を食う行為の「血生臭さ」に気付かされただけである。

「お母さん、家畜って食べる為だけに育てられた動物って事よね」

それはそうと男一人、女二人で囲むスキヤキは良いものでありましたよ。