ヒャッケンセンセイ

妻が実家の法事に出て,そこで残った料理と麦酒を貰って来てくれた。
アサヒスーパードライを何と一箱,料理は寿司,鰤の照り焼き,筍と茄子の天ぷら,ミョウガの酢の物等。
法事で出される料理と麦酒の相性は何故これ程まで良いのか。お会いした事の無い故人に感謝の念をおき,有り難く頂く。

内田百間(百間は正しい漢字が私の携帯では表記できない)のエッセイ「第二阿房列車」で,上野から新潟へ向かう寝台列車内で,ボーイの喫煙所を間借りし,弟子の「ヒマラヤ三系(変なあだ名)」氏と弁当のおかずを肴に魔法瓶に入れた酒を飲み交わす一文があるのだが,物凄く好きなので抜粋した。


「汽笛一声動き出したから,始めた。
二人並びの狭い座席に,二人で並び,だから弁当を置く場所がないので,膝の上に置き分けた。魔法瓶は背中寄りの所へ置き,一々手を伸ばして引き寄せて注いだ。
うしろの窓のカアテンは揚げておいたけれど,外が暗くはあるし,お月様は見えず,何しろ真後なので振り向かなければ何も見えないから,外を見ることはあきらめた。目の前の,通路を隔てた洗面室の緑色のカアテンが,あまり暑いのでそこの窓を一寸許り開けた隙間から吹き込む風にあおられて,ひらひらするのを眺めながら,献酬する。酒の肴は,鶉の卵のゆで玉子,たこの子,独活(うど)とさやえん豆のマヨネーズあえ,鷄団子,玉子焼,平目のつけ焼きと同じく煮〆(にしめ)等である。」

この文だけでいくらでも呑みたくなってしまう。一応日記だし,途中少し,はしょろうかと考えたが,素晴らしいのでやっぱり丸々移した。

嘉村磯多の私小説「崖の下」という作品でも凄く呑みたくなる大好きな一文があるのだが,前から紹介たいと思っていて,すでに書いたような記憶もあるのでやめておく。
もし気になるようなら読んでみて下さい。