恐怖

仕事が終わり、売れ残りのプリンとロールケーキを箱に詰め、制服と一緒に自転車の籠に乗せて家路につく。
帰りにスーパーに寄って晩メシを買い、自転車に戻ってみると、無いのだ。安心しきって籠に置きっ放しにしてあった売れ残りの詰め合わせが制服を残して消えている。
大阪で住んでた頃、朝飯にとコンビニで買ったサンドウィッチをこれまた自転車の籠に置き忘れ地下鉄の駅に下りてしまい、一分後ぐらいには気付いて取りに行けばもう無かった、という事があったが、それは大阪。まさか徳島でも食べ物だけ盗る人がいるとは。
でもまあどうせ売れ残りだし、同じマンションの友人にでもあげようと考えてたが、何より制服が無事だっただけ良かったと気を取り直し、スーパーで買った半額のチキンカツを囓りながら再び家路に。
スーパーすぐ近くにある押しボタン式の信号機ボタンを押して変わるのを待つ俺の背後に、口髭を生やした鋭い一重のオジサンが自転車に跨がっている。そこで俺が見たもの…。
その左手に開いた見覚えのある箱を抱え、右手にはまるでコンニャクゼリーでも吸い込むかのように、チュルリとプリンを流し込んでるオジサンの姿。
それ絶対俺のだ…。俺もチキンカツを片手に対峙する。オジサンの方も気付いてるのかわからんが再びチュルリ。スプーンは付いてた筈だが。
この間約30秒程度だったが、信号も青になった事だし俺は何も言わずその場を離れた…。